戦争を終えた世界 

 どこにも到達しない。

 僕はながら族なのだ。
 仕事をしていたってあの子の事を考える。
 そして彼女は違う。集中力の前頭葉から僕は消え失せる。

 僕は彼女のなかに生きている自分の半分が死んでしまって、痛みにのたうちまわる。
 それは死に最も近い痛み。
 生きながらにしてそれを体験する。

 はらわたを裂いてくれ。腸をひきずりだして、その退化した腎臓を握りつぶしてくれ。

 叫び、声が枯れる。

 地雷は未だ地中の誰も知らない場所に眠り続けている。起爆装置がまだ生きているのか死んでいるのかわからない。
 僕らはそこを手を繋ぎ渡る。
 
 僕のしらない波長で無線はやりとりされる。知らない種類の暗号で。

 僕は負けたのだ。
 意外なほどあっさりと、そして決定的に。

 戦争は終ったと世界が決める。痛みは消えた、雲は晴れたと。
 僕は、僕らは、今日もそこを歩き続ける。踏まないように。