クレイジー・クレイジー

 ひどいフブキなのだ。出かけるのが億劫になるくらい。この時期―またもや季節の話で申し訳ないが―1日に30cm以上の降雪を記録する北方の国々では、引きこもりの人口がその年代に関係なく夏のそれと比べて、40%も上昇するという。(『カオス4想像』調べ)
 しかし、「こんなもの豪雪とは言わないのだよ」と、わたしの友人は膝まで積もってもさらに降り続く粉雪の嵐のなかをグイグイとこいで、颯爽と国道36号線を歓楽街方面へと消えて行った。酒とオンナのパラダイスは氷点下でもアツアツなのだ。真夏の街頭よろしく、ピンクのネオンは煌々と存在感を示し、飛んで火に入る虫たちを焼き尽くすのである。
 冬靴がない。
 井上陽水に傘がないように、僕には冬靴がない。
 エア・フォースⅠの耐えられる季節は完全に過ぎ去った。
 『行かなくちゃ、君に会いに行かなくちゃ』
 しかし問題は、会いに行く君がいないということである。