コンペイ糖溶けて

 気負いなく日々生活をこなす。それは小さなコンペイ糖のような邪気を、すっからかんのこころに一粒ずつころんころんと落としていく作業だ。
 コンペイ糖は、もともとは球であった七色の砂糖の小さなかたまりを、一色ずつ小型タンクローリーのような容器の中でガラガラとまわし、そこに徐々に砂糖の液体を流し入れ、まん丸のコンペイ糖にわずかに小さくあった『デコボコ』に徐々に付着していき、それが徐々に大きくなり、よいところで機械を止めた時にできあがる。機械は内側を熱してあり、その熱によって『デコボコ』が固まる。虹色のコンペイ糖になってしまうので、作業は1色ずつ行われる。単体でなないろのコンペイ糖も素敵、と思いがちだが、それらが集まったときの色の映え具合は、一個一色で色づけたものが集まったときのそれと比べると―僕は実際それを見たことがあるが―わかりにくすぎてかすんでしまう。色と形のマジックなのだ。それぞれ単色のとげとげの甘い者たち、でなければいけない。
 社会というデザインのおかしいパッケージの中で輝く術は、コンペイ糖のそれのように、単体で単色を作り出すことに秘訣があるのかもしれない。
 煮えきらずとも、すぐにからだの内側は熱くなる。気負いのない生活のなかでも、色づきしコンペイ糖がひとつずつ落ちてくる。やわらかなカーブのトゲが胃壁を刺激する。粘膜には充分すぎるショックで。彼らは溶け出し、やがて液化する。色とりどりであったはずの飴たちは、すべてが同様のシンプルな味覚のみを残してやがて消えゆく。